HOME > 最期の入院
痰の吸引
父親は煙草が大好きで結局最後まで止められませんでした。
そのせいで、痰がひどくからんで、看護師さんに痰を吸引してもらうのはとてもつらそうで、見ていられませんでした。
痰の吸引をしてもらってもすぐにまた痰がからんでいます。
父親が痰の吸引をしてもらっているのを見たら、辛そうで誰でも煙草を止めるのではないかと思ってしまいます。 大分痰の量は減ってきてはいましたが、生きている限り、痰の吸引をしてもらうのは、必要のようでした。
入院したばかりの頃は、看護師さんに痰の吸引をしてもらっても、口の中の痰の量はすごくて、母も私も、父親の口の中の痰をティッシュでとってあげてました。 普通だったらあんなにティッシュを口の中奥深くつっこんだら「オエッ」となりそうですが、父親は平気でした。
「もっと深くやらないととれないよ。へたくそ!」と父親に怒られました。
「もう、やってあげない!」と私は言い返すと、笑っていました。
ボケの症状
父親は病院にいるのに、自宅にいると勘違いしているようでした。
「タンスにシャツが入っているから取ってきて」とか
「病院に薬を取りにいかなくちゃね。」とか病院にいながら、言っていました。
看護師さんに「ここは病院だよ。薬は点滴に入っているから大丈夫!」と言われて
「アッそうか。ここは病院か。まかせておけばいいんだな」
「そお、まかせて!」と看護師さんと話していました。
でも、やっぱりどうしても自宅にいると勘違いしてしまうようでした。
そして、天井を見て、「魚がたくさんいるよ。ほら! きれいだね。」と
にこやかな顔をして言います。
私もいっしょに「きれいだね」と言いながら、三途の川にいる魚なのかな?と思っていました。 死の恐怖から逃れるためにボケると聞いたことがありますが、以前は父親はとても死ぬことを恐れていたように思います。
病室に行くと、「昨日は殺されるところだったよ」と話したこともありました。このようにボケて現実と死後のことが、曖昧になっていき、死後の世界に違和感なく入っていけるのかなと思ってしまいました。